正しい学習法
本質を見抜き、抽象化能力を高める
本質を見抜くために必要なこと
理解力の向上と抽象化能力の関係
無意識の認識と脳の働き
基礎知識の重要性
数学本舗が提唱する学習法
対象の本質を捉え、抽象化能力を身につけ、初見の問題にも対処できる本当の数学力を磨くための学習は
次のステップにまとめられます。
STEP1
知識の土台となる定義を
正確に解釈し、
自分の中の常識にまで高める
STEP2
定義から定理や公式の導出を
人に説明できるようになる
STEP3
応用問題に挑戦し、
数学的な思考力を獲得する
特に重要なのはステップ1と2であり、このメソッドの土台となる部分です。
この部分をいい加減に行うと論理的思考も抽象化思考も獲得できず、ステップ3で必ず躓くことになります。
ステップ毎の解説
- STEP1:知識の土台となる定義を正確に解釈し、自分の中の常識にまで高める
まずは教科書や参考書から定義の部分を探しましょう。ほとんどの場合、単元の最初の部分に太字で書かれた数学用語や記号の意味の部分となります。
ここでは、その定義をその文言だけで解釈した気にならないように気を付けましょう。
多くの例や例題を通して、その定義がどのようなものなのかを出来る限り正確に掴むことが重要です。この際に、単に例や例題を眺めるだけでなく、それらがどうその定義に合致しているか一つひとつ確認しながら読むようにしてください。
そこまでできたら、例題や基本問題に取り組みましょう。ここでの問題や例題とは、定理や公式に関するものではないということに注意しましょう。つまり「定義」は「定理や公式」とは別物であり、それを明確に区別しておくことが重要です。(定義・定理・公式の違いについてはステップ2の冒頭で解説します)
例や基本問題を通してその定義の使われ方などが分かれば、その定義の解釈は最初の文言より、自分の中に染み込んでいるはずです。
最初、新しい定義や概念はしっくりこなくて、違和感がありますが、多くの例や問題に触れるうちに、それらは自分の中でしっかりと落とし込まれた状態、つまりあなたの常識の知識となります。
そこまでくれば、ステップ1は終了です。
※ステップ1につきましては、一部例外もございます。「場合の数」の単元では、定義の解釈よりも、「対象となるものの数え方」自体が大切であり、より効率的な数え方を理解し、記憶することが学習の中心になります。
- STEP2:定義から定理や公式を論理的に導出する
定義と定理・公式の違いを簡単に説明しておきます。
定義とは、数学用語や記号などの意味を定めた約束事であり、定理・公式とは、その定義や既知の知識(以前学んだ数学的な物事)をもとに論理的に導出されるものです。このことを踏まえた上で、続きをお読みください。
次に学ぶべきは、定理や公式です。これらは、新たに学んだ定義や既存の知識(性質等)をもとに生まれたものです。そのため、導出過程をしっかり理解し、論理的に説明できるようになることが大切です。
(三角比の場合には、正弦定理や余弦定理などがこれにあたります。正弦定理は定義のみでなく、中学で学習した円周角の定理が、余弦定理には同じく三平方の定理が必要となります。中学で学んだ定理がどう正弦定理や余弦定理に活かされているのかを注意深く観察してみてください。またこの定理をよく観察することで、三角比の拡張定義がなぜあのように定義されたのかの理由も垣間見ることができるはずです。)
公式の導出を理解するためには、なぜその手順が成り立つのかを考えながら、すべての行程を論理的に掘り下げてください。最終的には、その導出過程を完璧に覚えてほしいのですが、覚える際に「写経」のように証明を繰り返し書く必要はありません。そのかわり教科書の例題に対して、公式を使うのではなく、その公式の導出方法を使って問題を解いてください。公式とは、一般的な問題解法のパターンをまとめたものですから、公式の導出方法そのものが問題の解法にもなっています。
何題か例題を公式を用いず解いていくうちに、公式の証明は自然に覚えられるようになります。そして公式の導出が完璧に理解できていれば、例題のような基礎問題は自力で解けるようになります。
公式証明の過程には昔の数学者が生み出した知恵が多く含まれていますので、この練習を通して数学的な思考力が育まれます。
定義から導出される性質・定理・公式はすべてこのように学習していき、あなたの常識の知識にしましょう。このレベルに達したら、遠慮無く公式を使って解いてください。ただし、公式を使いながらも、どうやってその公式が導出されるのかを頭の中に思い浮かべながら使うようにしてください。
数学本舗では、公式を用いた場合には、なぜその公式で解けるのかを都度説明してもらい、本当にその公式が自分のものになっているのかを確認していきます。時が経つと、その公式の成り立ちを徐々に忘れていきますので、それを防ぐためにも必要だと考えています。
ここまでのステップで数学の基本的な知識が習得できます。この知識こそが、理解を助ける最強の武器となるのです。これにより、あなたの理解力は飛躍的に向上します。
- STEP3:応用問題に挑戦し、数学的な思考力を獲得する
ステップ1と2で基礎的な例題や問題に取り組むことで、定義や公式を自在に使いこなせるレベルに達したら、次は応用問題に挑戦しましょう。応用問題では、公式を直接使うだけでは解けない場合が多くなります。ここでは、問題をよく読み、与えられた条件(仮定)から結論を導くためにどう工夫するかが重要です。
応用問題を解く際には、問題文をしっかりと読み、何が与えられた条件で、何を求めるのかを明確にしましょう。大抵の問題は仮定(条件)から結論(求めるもの)の間をつなぐ論理がわかれば解けます。また与えられた条件だけでなく、様々な性質も条件として使う必要がありますので、すべてのピースを机の上に並べて、仮定から結論までの筋道をどう組み立てていくか考えましょう。
考える時間の制限は特に設ける必要はありませんが、一通り自分ができそうなことは実際にノートに書いてやってみましょう。今の知識でできそうなことを全てやり終えたらできなくてもそこで終了しましょう。
それで結論まで辿り着いたら、解答を見て答え合わせをし、解答までの筋道が同じであれば、その問題を解くための知識は既に身に付いているので、今後繰り返し解く必要は全くありません。「今回はたまたま運良く解けただけかもしれないから、何日か経ってまた解く必要があるかも」と思っている人は、まだ知識が定着していない証拠です。ステップ1と2で確実に知識を自分のものにできていれば、確信を持ち、答えまでの筋道をつけられたはずです。そういった場合には、その知識をすっかりと忘れてしまわない限り、一度確信を持って答えた問題に対しては何度やっても同じように解けるからです。
では解けなかった、または、解けるには解けたが…自信が無い、という場合については、3つのパターンに分けて解説することにします。
A.全く手がでなかった場合
その問題については、解答解説をよく読み、足りなかった考え方を学びましょう。その後、必ず自分で何も見ずに再度解き直してみてください。「理解できた」と思っても、実際に手を動かしてみると再現できないことも多々あります。
再現できないからといって、すぐに解説を見直すのではなく、まずは思い出す努力をしてください。どういう考え方だったのか、そしてその考え方をどのように用いたのか、一つひとつ思い出してみましょう。重要な事は、何とか自力で思い出すことです。自分の頭だけを使って思い出すという行為が最も学習効果が高い方法であることが近年の研究で明らかになりました。
余談ですが、数学が得意な人で「数学は解法の暗記だ」といっている人は、大半は応用問題を解く時のこの足りなかった考え方を理解し、記憶することを解法暗記と呼んでいます。最初の例題レベルの基礎問題から解法を暗記するわけではないことに注意しましょう。
B.解答が間違っていた場合
自分の解答がどう間違っていたかを徹底的に分析する必要があります。考え方が間違っていた場合には、なにがどう違っていたのか、定義の解釈に誤解があったのか、問題の読み間違いによる勘違いだったのか、また考え方はあっていたが計算力不足により最後まで計算し切れなかったのか、それら間違えた原因によって、その深刻度は変わってきます。ステップ1,2をいい加減に行うと、定義の解釈に誤解が起きやすくなります。こういうことが頻繁に起きる場合にはステップ1にもどる必要があります。
C.解答とは解き方が全く異なっていたが、答えは合っていた場合
答えはあっていたが、解き方が全く異なる場合はどうでしょう。こういったことは、場合の数や確率の問題でよく起こります。そのときは、自分の解き方と解答の違いをよくみてから、解答の考え方も理解し、記憶しておきましょう。勿論その場合も何も見ずにもう一度その解答を再現してみてください。あとはAの場合と同様です。
そもそも「なぜ解き方が異なるか」についてですが、自分で作る解答は恐らく今まで学習した基本的な考えに基づく汎用的な解き方である可能性が高いかと思います。一方解答解説の方は、そのタイプの問題に特化した効率的な解き方(考え方)である場合が多いといえます。ですから解答の方の考え方もしっかりと理解して今後に活かせるようになりましょう。(稀に逆の場合もありますが…)
このように応用問題を解いていくと、数学的な思考力(数学に必要な知識)が自分の中に蓄積されていきます。ここで培った知識により、全く別の分野でも関連性を見つけやすくなります。また新しい単元に入り、新しい概念を学んだときにも、今までに行った手法で構成されたものと同じか、または非常に似ていると自然に脳が認識できるようになります。こうして、意識しなくても様々な知識が頭の中で統合され、体系化されていきます。
これこそが抽象化能力です。
この方法で学習していけば、数学の本当の力が身に付いていきます。これは試験で良い点を取るというだけの学習法、つまりは「数学の問題を解くためだけのスキル」ではありません。考え方自体を論理的思考や抽象化思考にアップグレードするための訓練ともいえる学習法ですので、日常生活の中でも必ず役に立つことでしょう。
このステップ3の学習は、ステップ1,2で基礎力と数学的思考力がかなり高いレベルで身についていないと独学では困難になります。
特に誤った解答の分析には深く幅広い知識を必要とする場合が多々あります。
そこで数学本舗では、数学の専門家である講師が、あなたの代わりにその解答に至った考え方を分析し、考え方の修正、知識の補完を適宜アドバイスします。
このきめ細やかなサポートは、数学本舗ならでは!あなたの学習は最も効率的なものになります。
まとめ
1から3までの過程をしっかりとこなし、正確に数学的知識を身につけると4の段階で本質を見抜くことができるようになります。
そうすると抽象化能力は自然と身についていきます。
自学自習でこのように学習することは非常に難しいかもしれません。
なぜなら、1の定義の解釈を正確にすること自体、数学の勉強を始めたばかりの人にとっては困難な作業となりますし、
4の不正解の分析には相当の数学力を必要とします。
数学本舗ではそれらをサポートするサービスを提供しています。