朝比奈 伸 / 理学博士

Shin Asahina / Doctor of Science


1975年高知県生まれ。二児の父。

地元公立高校から私立東京理科大学理学部に入学。
その後、東京工業大学 大学院総合理工学研究科に進学し、同校にて博士号(数学)を取得。
マンツーマン指導のオンライン数学塾・少人数制個別指導の対面塾を開業し、9年目。
現在は、より自分の指導法を活かせるオンラインでのマンツーマン指導へ一本化し、全国の生徒へ正しい数学の学習法を指導している


私は高知県の田舎町で生まれました。幼い頃は自然の中で、無邪気に遊び回る日々で大学進学なんて考えたこともありませんでした。その頃は学校の宿題をこなすことだけが、私の「勉強」でした。

中学校に進学すると、私は次第に勉強への関心を失い、成績も急降下。周囲が受験に向けて勉強に励む中、私はどこか他人事のように感じていました。しかし、中学3年生の秋、そんな私に転機が訪れます。英語の冠詞「a」と「an」の違いもわからない私に辟易した母が、1人の家庭教師をつけてくれたのです。
その先生は、私が今まで経験したことのないほど大量の宿題を毎日課してくれました。ほとんど勉強をしてこなかった私にとって、最初は途方に暮れるばかりでしたが、やがてその宿題をこなすことが日常になっていきました。朝から晩まで、寝る間も惜しんで必死に取り組んだ結果、わずか4か月で実力テストの点数が250点から450点へと飛躍的に向上。奇跡のような変化に自分でも驚きました。この成功により、私は大学に進学して、研究者になりたいという希望を持ちはじめました。

高校に進学すると、私は勉強する習慣がすっかり身につき、成績も良好でした。特に数学が好きになり、解けない問題に何日も挑むことが喜びとなっていました。しかし、実力テストではなかなか思うような結果が出ず、次第に焦りが募っていきました。希望大学への進学がとてつもなく高い壁であると認識し始めた頃、ある書籍に出会います。某著名人の『数学は暗記だ』という本でした。
その内容は、私がこれまでしてきた勉強法とは正反対のものでした。効率よく解法を暗記し、できるだけ多くの問題を解くことでパターンを身につけるという方法に、私は次第に傾倒していきました。数学だけでも10冊以上の問題集をこなし、受験でよく扱われる典型的な問題に関しては、ほぼ解く事ができるようになりましたが、初見の問題が多く出題される難関大学の入試問題には手も足もでませんでした。

a pen sitting on top of a piece of paper

それでもなんとか大学の受験を突破したものの、その代償は予想以上に大きかったのです。大学に入学してすぐに直面したのは、全く理解不能な講義たち。解法暗記に頼った勉強により、本質が抜け落ちた知識の集まりしか持ち合わせていない私には大学の授業内容が少しも理解できなかったのです。そして大学での授業にも欠席するようになりました。
テストでは進級する程度の点数は取ることができましたが、一向に授業内容は理解できず、やる気はどんどんなくなっていきました。

man with backpack beside a books

大学3年生になった頃、たまたま出た講義で、私は教授職を定年退職し、非常勤講師となっていた梅垣壽春先生と出会いました。先生は戦中・戦後の困難な時代にあっても、情熱を持って研究に取り組んだ人でした。先生の語るエピソードは、効率ばかりを追い求めていた私の心に深く突き刺さりました。そして思い切って講義の終わりに私の現状を話してみました。すると先生は親身になって相談にのってくれ、その先生が持っている他学部の講義も聴講するようすすめてくださいました。その後私は週2回その先生の講義を受け、講義後に沢山の話を聞きました。当時の私では数学に対してまだまだ勉強不足で、先生の教えてくれた事の半分も本当の意味で理解できていなかったかもしれませんが、先生の数学に対する情熱が私の数学に対する考え方を大きく変えてくれました。先生は私に、数学という学問の本質、そして論理的に考えることの重要性を教えてくださいました。そしてなにより、高校時代に暗記数学に傾倒する前に感じていた数学の楽しさを思いださせてくれました。

私は「数学とは暗記ではない」という真実にようやく気づきました。
暗記による効率的な学びは一時的な成功をもたらすかもしれませんが、それは表面的な知識に過ぎなかったことを身をもって経験しました。

その後、先生の勧めで、私は他大の大学院に進学しました。そこで、私は一つ一つの概念を本質から理解することを心がけ、論理的に考える力を磨いていきました。数学の本質が見えるようになると、それまでの勉強がいかに表面的だったかがはっきりとわかりました。しかし、その遠回りがあったからこそ、心から納得し、理解できたのだと思います。

時間と労力を要するこの道のりは決して楽ではありませんでしたが、それこそが本当の知識を得るために必要なプロセスであると悟りました。そして、私はその努力を続け、ついに理学(数学)の博士号を取得することができました。

振り返れば、高校時代の解法暗記に頼った勉強が、私を遠回りさせたことは間違いありません。しかし、その経験があったからこそ、私は本当の学びの重要性に気づき、多くの先生方との出会いに助けられて今の自分があるのだと思います。

私に大きな気づきを与えてくださった先生は既に他界されましたが、彼の想いを多くの人に伝え、そして私のように遠回りしないよう、できるだけ多くの生徒に数学の本質とその正しい学び方を指導していくことが今の私の仕事になりました。

ai generated, math, mathematical proofs
a black and white photo of a number of calculations

大学院で博士号を取得し、東京でオンライン塾を開設しました。ほどなくして、はじめての我が子が死産となってしまう悲しい出来事がありました。私も妻も言葉にできないほどの深い悲しみにくれる日が続きました。少しでも環境を変えるため、空気の綺麗な故郷へいくことにしました。

実家である旅館の跡地を活かし、地元の生徒たちに真の数学を教えるべく、オンライン塾と並行して同枠3人までの対面個別指導塾の数学塾を立ち上げました。
ゆかりある生徒を教えることから始まり、徐々に地元の生徒が増え、気づけば子供から社会人(同業の先生まで!)まで、幅広い年代のたくさんの生徒に恵まれるようになり、立ち上げから数年で常時満席状態となりました。

解法暗記ではなく、数学を定義から正しく理解することを指導してまいりました。たくさんの生徒が数学を克服し、数学を好きになってくれました。

中学生のあいだに高校数学を教えきった生徒や、数学が大の苦手だったのに、いまや私と同じ志をもった数学の塾講師になってくれた生徒、地元の塾の先生が通ってくださったり、地元高校の理系クラスの生徒のほとんどが問い合わせてくださったことも、知らないあいだに地元の大手塾が私の塾を紹介しているということもありました。会う人会う人にすごく良い塾だとみんながいっていると、いっていただきました。
私の授業は粛々と数学の指導するのみで私語はほとんどなく、生徒と友人のように和気あいあいとなかよく授業をしていたわけではありませんでしたので、私の数学を学ぶうえでの信念が純粋に評価され、それが間違っていなかったんだと、本当に嬉しく思いました。

自分の好きな数学を教えられる喜びと感謝、どんな生徒からも学びがある毎日で、本当に人に恵まれた9年間でした。

しかしながら、90分1枠に、同時に3人の生徒と時間共有する中で、次のような課題を感じるようになりました。

  • どの生徒にも同じ指導時間を提供したいが、学力の違いや生徒の質問内容、解説内容によっては個々の指導時間に公平性がなくなってしまう
  • 周りの目を気にして質問できない生徒よりもどうしても積極的に質問してくれる生徒の指導時間が増えてしまう
  • アクティブラーニングを目指し、疑問も理解できたことも、生徒に口頭でアウトプットさせたいが、周りの目を気にする等の様々な理由ですぐに答えることができない生徒には、他の生徒との指導時間の兼ね合いもあり、講師のインプットに偏ってしまう

こうした課題を踏まえ、私にとってもみなさんにとっても、もっとより良い方法はないか、改善の余地はないのか、できることはもっとないのか、と考えるようになりました。

また、家で学習習慣がなく、勉強は塾だけ。「定義を正しく解釈し、問題を解く」という学習時間をかけられず、いつもテストに追われている生徒の多くは、「先生、考え方とかいいから解き方教えてほしい!はやく!」という感じでした。そういった生徒には理解を追求せず、目先のテストでどうにかできるよう指導してまいりました。結果として学校のテストでは高得点、好成績、大学推薦も突破し、本人は満足していました。本人、保護者様には大変感謝いただけましたが、私個人の願望は、もっと数学を本質から理解させてあげたかった、中身の伴わない点数、はりぼての知識ではなくて、本当の数学を知ってもらいたい!もっと、どんな生徒にも、今以上に!!

そういう気持ちが強くなっていきました。

私が目指しているのは、「ひとりとしてあますことなく、真の数学を教えたい!」ということでした。
もともとオンライン塾から始め、その後対面型の塾を平行して行ってきましたが、オンライン塾では自分の理想とする形で指導を続けていくことができていました。
オンライン塾では人数をたくさん受け入れることができなかったため、より多くの人を受け入れられる対面塾を立ち上げ、小さいながらも9年間で何百人もの生徒に数学の指導を行うことができたことは私の財産といえる経験でした。
ただ、経験を積んでいくなかで、もっと自己を高めたい気持ちと、現状維持でいることへの疑問が消えませんでした。


  • ただ数学のテストで点がとれれば良いのか
  • 成績があがって喜んでもらえればそれで良いのか
  • いつも満席ならそれで良いのか
  • 要望があればクオリティをおとしても、人数をとればいいのか

私にはどうしてもそうは思えず、数学を本質から教える者として、もっと理想のかたちへ近づきたかったのです。
私が考える理想に近づくことができ、なおかつ時代に合った指導形態を考えたとき、

これ以外ありませんでした。

これまで多くの生徒や保護者様に支えられたおかげで、満席が続き、やむなくお断りさせていただくことも多く、安定した生活をおくっておりましたので、この改革は非常に大きな決断でした。
いつか、オンライン一本化にする、のではなく、思い切って対面指導をとりやめ、オンライン指導一本化とすることに決めました。
こうして対面式で受け持っていた生徒でご継続の意思があるかたは、オンラインへ移行していただくことになりました。

ただ、オンライン塾での指導は、田舎ではほとんど浸透しておらず、肌感では抵抗のある方も多くいらっしゃったかと思います。
オンライン塾という形態は現代ではまだ新しいので、対面式からオンライン塾へ移行する際に、

  • オンラインで、生徒がしっかり理解できているか講師はわかるのか
  • オンラインだと生徒が隠れてスマホをみたり、サボったりするのではないか

person holding pencil near laptop computer

主にこの二つ点でご不安に思う方が多かったように思います。オンライン指導は対面指導に劣るのでしょうか。

オンライン指導では、共有のホワイトボードを用いての対話型指導になります。オンライン指導は、対面指導よりも生徒の学力状況、理解の深さをはかることができますし、オンライン指導のほうが、対面よりも言語によるコミュニケーションがとれますので、深い理解を促すことができるのですが、今回、対面指導からオンライン指導へ移行した生徒にも確かな効果を実感しています!
同枠3人までの個別指導から1対1オンライン個人指導になったことで生徒からも、あらゆる側面で格段に便利になり、学習環境も良くなったという声が届きました!

person in red shirt wearing black and gray headphones

学習効果・効率 UP(生徒からの声)

所要時間・交通費の削減に(生徒からの声)

講師自身の実感

他にも、受験期には非常に重要である感染症の予防など、現代に合った便利な指導形態になりました。