数学を正しく学ぶために
数学を効果的に学ぶには、まず 数学とは何か を理解することが重要です。
数学を攻略するポイントは、その仕組みや基本的な考え方を知ることにあります。
数学の構築方法
数学は、「公理」と呼ばれる基本的な仮定に基づいて構築されています。
公理とは、証明を必要としない、当たり前のように受け入れられている基本的なルールのことです。
例えば、以下のようなものが公理に該当します。
1.同じものに等しいものは、互いに等しい
2.同じものに同じものを加えた場合、その合計は等しい
3.同じものから同じものを引いた場合、残りは等しい
4.互いに重なるものは、互いに等しい
5.全体は、部分より大きい
これらは日常生活でも「当たり前」と感じるような事柄です。
例えば「すべての直角は等しい」や「2点を通る直線を引くことができる」といったものも公理です。
定義とは何か?
公理に基づき、数学で使う言葉や記号の意味を厳密に定めたものが定義です。
例えば、「二等辺三角形の定義は?」という問いは二等辺三角形とはどういう三角形を表すのかという意味であり、数学ではその意味を「2つの辺の長さが等しい三角形である」と定義されています。
また、「平方根の定義」とは「2乗すると元の数になる数」と定義されます。
このことから「4の平方根とは?」と聞かれれば、「2乗して4になる数は?」と聞かれていると解釈でき、その答えは「2と−2」となる訳です。
このように定義は数学の議論の基礎となり、これを正確に解釈し、使いこなすことが重要です。
命題と定理
公理と定義をもとに導かれる事柄を「(真の)命題」と言います。
その中でも特に重要なものを「定理」や「公式」と呼びます。
例えば、二等辺三角形に関する命題「2つの角が等しい」は、「2辺の長さが等しい」という定義をもとに導かれる真の命題です。
また「円周角の定理」は二等辺三角形のこの命題を用いて導出されるものの一つです。
このような命題がどう生み出されるのかの部分にこれまでの数学者の工夫があります。
この工夫の中にこそ数学的な考え方が詰まっているのです。
数学の全体像
このように、数学はまず公理という基本的なルールから始まり、その後に定義が作られ、そして様々な命題を生み出すことで発展してきました。
中学や高校で学ぶ数学は、数学という長い歴史の中で構築され、体系化された基礎的な部分をざっくりと学び直しているに過ぎません。
覚えるべきもの、学ぶべきものは何か?
数学の全体像が見えてきたと思いますが、では私たちは数学をどう学ぶべきなのでしょうか。
これまで私が教えてきた生徒の大半は、「公式を覚えて、様々な問題を解く」ことが数学の勉強であると思っていましたが、そうではありません。
覚えるべきことは、公式ではなく、定義の方です。
公理は基本的なルールなのでほぼ覚える必要はありません(そのルールは常識として自然に身についていることが多いためです)。
そして公式や定理は、定義や公理から導出されるものであり、その導出過程において、数学的な考え方が詰まっている。
ということは、正しい数学の学習法とは、定義を正確に覚え(解釈し)、定理や公式がどのように導かれるかを理解することであるといえます。
公式を暗記してしまうことは、最も大事な部分を素通りすることになり、数学的な考え方を学ぶことを放棄していることになります。
まとめ
このコラムでは、数学の構築法から、数学をどう学ぶかについて解説してきました。
数学において正確に覚えておくべきことは定義のみであり、
定理や公式は覚えるのではなく、その導出方法をよく理解し、
そこで使われている考え方をしっかりと自分のものにすることが
正しい数学の学習法であるといえます。
より詳しい学習法は 数学本舗の学習法 にありますので、参考にしてください。