展開の構造とは?箱から選んで掛け合わせるイメージで理解しよう
展開とは?
展開という言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?
たとえば、 \( (x + 2)(x + 3) = x^2 + 5x + 6 \) といった変形。
「展開」とは、かっこの中にある項どうしをかけ算して、それらを全部足し合わせる操作です。
でも、これってどういう仕組みで、どんなルールで進んでいるのでしょうか?
今回は、展開の構造を「箱から項を選んで、掛けて、全部足す」という視点から解き明かしていきます。
◆展開の基本:箱の中から1つずつ取り出す組合せ
展開は「掛け算と足し算の組合せ」として理解できます。たとえば:
\((x+2)(x+3)\)
この式には、2つのかっこがあり、それぞれに2つの項が入っています:
- 第1のかっこ: \( x, 2 \)
- 第2のかっこ:\( x, 3 \)
この2つのかっこを「箱」と見立てると、それぞれの箱から1つずつ項を取り出して掛け算する、という考え方ができます。
つまり:
- \( x \times x = x^2 \)
- \( x \times 3 = 3x \)
- \( 2 \times x = 2x \)
- \( 2 \times 3 = 6 \)
これらをすべて足すと:
\(x^2 + 3x + 2x + 6 = x^2 + 5x + 6\)
これが展開の正体です。
◆ 展開は分配法則のくり返し
なぜこんなことをしているかというと、それは「分配法則」に基づいています。
分配法則とは、次のようなルールです:
\( a(b + c) = ab + ac \)
このルールを展開に当てはめていくと、
\( (x + 2)(x + 3) = x(x + 3) + 2(x + 3)\)
となり、それぞれ展開すると:
\( x^2 + 3x + 2x + 6 = x^2 + 5x + 6 \)
このように、展開とは「かっこの前の項を、かっこの中のすべての項にかける」ことの繰り返しだとわかります。
◆ 項が増えても構造は同じ
たとえば:
\((x + 1)(y + 2)(z + 3)\)
この場合、3つの箱があります。それぞれに2つの項が入っており、1つずつ取り出して掛け合わせる組合せは、積の法則より \( 2 \times 2 \times 2 = 8 \) 通り。
すべての項は異なるので、展開結果は8項の和になります。
展開結果は:\(xyz + 3xy + yz + 2zx + 6x + 3y + 2z + 6\)
このように、各かっこの中から1つずつ項を選び、すべての積を加える操作が展開の本質です。
つまり展開とは、各かっこの項どうしを、1つずつ全部掛け合わせて、すべてを加える操作なのです。
◆ 一気に展開する工夫:同類項を見つけよう
たとえば:
\( (x + 1)(x + 2)(x + 3) \)
このような3つのxの1次式の積では、結果は次の4つの種類の項に分けられます:
- 3つの箱すべてから\(x\)を選ぶ:\( x^3 \)
- 2つの箱から\(x\)を、残り1つから定数項を選ぶ:\( x^2 \)の項が3通り(\(x\times x\times 3, x\times 2\times x,1\times x\times x\))
- 1つの箱から\(x\)を、残り2つから定数を選ぶ:\(x\)の項が3通り(\(x\times 2\times 3, 1\times x\times 3,1\times 2\times x\))
- 3つの箱すべてから定数項を選ぶ:\( 1 \times 2 \times 3 = 6 \)
計算すると:
- x²の項:\(3x^2+2x^2+x^2=6x^2\)
- xの項: \(6x+3x+2x=11x\)
- 定数項:\(6\)
したがって、展開結果は:\(x^3+6x^2+11x+6\)
このように構造的に考えると、展開を一気に行うこともできます。
◆ 応用:係数から素早く展開する
たとえば:
\( (2x -1)(x + 2)(x -4) \)
この場合も、同じ要領で考えると:
- x³の項:\(2x\times x\times x=2x^3\)
- x²の項:\(2x\times x\times (-4)+2x\times 2\times x+(-1)\times x\times x=(-8+4-1)x^2=-5x^2\)
- xの項:\(2x\times 2\times (-4)+(-1)\times x\times (-4)+(-1)\times 2\times x=(-16+4-2)x=-14x\)
- 定数項:\(-1\times 2\times (-4)=8\)
したがって、展開結果は:\(2x^3-5x^2-14x+8\)
◆ この構造は、実は「二項定理」につながる!
ここまで読んで、「あれ?この箱から取り出して掛け合わせていく仕組み、なんか見たことあるな?」と思った方、鋭いです!
実はこの展開の構造は、数学の中でもとても有名な「二項定理(にこうていり)」の基礎になっています。
たとえば:
\((x+a)^n\)
という式を展開するときも、まさに同じように、とを何回も選んで掛け合わせ、それをすべて加えていく、という構造をしています。
そのときには「何回選ぶか」の組合せの数として、二項係数(にこうけいすう)が登場してきます。
次回は、この「二項定理」をテーマに、さらに展開の世界を深掘りしていきましょう!
まとめ ▶▶▶ 展開の構造
- 展開とは、各かっこの中から1つずつ項を選び、それらを掛け合わせて、すべて加える操作。
- これは分配法則の繰り返しとして理解できる。
- 複数の項からの選び方を通して、組み合わせや場合の数と深く関係する。
- この考え方は、次回紹介する「二項定理」へとつながっていく。
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◆ 今日のQ&A
展開の構造とは何ですか?
展開の構造とは、複数のかっこの中から1つずつ項を選んで掛け合わせ、それをすべて加える操作のことです。
なぜ展開は必要なのですか?
展開は式の整理や関数の解析、方程式の解法に不可欠な操作で、式の構造を明らかにします。
二項定理との関係は?
展開の構造は二項定理の土台となっており、項の組み合わせを数えるときに二項係数が登場します。