和の法則・積の法則とは?──見分け方と使い分けのコツ
和の法則・積の法則とは?
和の法則・積の法則とは、場合の数を数えるときに使う基本ルールです。
和の法則は「重なりのない選び方を合計する」方法、積の法則は「段階ごとの選び方をかけ算する」方法です。
どちらも中学〜高校の数学で頻出する考え方ですが、使いどころや条件には明確な違いがあります。
今回はそれぞれの定義と違いを丁寧に解説し、どのように見分ければよいかを整理します。
◆ 和の法則と積の法則の定義
和の法則:
重なりのない選び方が複数あるとき、それらを足し算して全体の数を求める方法。
例:
家から学校に行くとき、最寄り駅が2つあります。
1つはA駅、もう1つはB駅です。A駅を使うと学校までの道順は3通りあり、B駅を使うと2通りあります。
ここで、「A駅かB駅、どちらか一方を使って学校に行く」とするとき、家から学校までの道順は何通りあるでしょうか?
このとき、A駅からの行き方(3通り)とB駅からの行き方(2通り)は重なりません。
つまり、どちらか一方の方法を選ぶので、3 + 2 = 5通りとなります。これが和の法則です。
積の法則:
2段階以上の選択があり、さらに前段階の選択によらず、次の段階の選択肢の数が変わらないとき、
それぞれの選び方の個数を掛け算して全体の数を求める方法。
例:
あるお店で、Tシャツを1枚とズボンを1本選ぶとします。Tシャツは3種類、ズボンは2種類あります。
Tシャツをどれにするかにかかわらず、ズボンの選び方は常に2通りです。
このとき、Tシャツとズボンの選び方の組合せは 3 × 2 = 6通り になります。これが積の法則です。
◆例で確認:10人から委員長・副委員長を選ぶ
積の法則で解く
まず、委員長を10人の中から1人選びます(10通り)。
次に、副委員長を、残りの9人の中から1人選びます(9通り)。
よって、
10 × 9 = 90 通り
ここで、積の法則が適用できる理由をもう少し詳しく説明しましょう。
たとえば、最初にAさんが委員長に選ばれた場合、副委員長はAさん以外の9人の中から選ばれます。
同様に、最初にBさんが委員長に選ばれた場合でも、副委員長はBさんを除いた9人の中から選ぶことになります。
つまり、「2人目の選択肢そのもの(誰が選べるか)は、1人目によって変わる」のですが、
選択肢の数(通り数)そのものは、常に9通りで一定です。
このように、前段階の選び方によって次の選択肢の中身は変わっても、数が変わらないという条件を満たしているため、
この場合には積の法則が適用できます。
和の法則で解く(非効率なやり方)
委員長がAさん → 副委員長は9通り
委員長がBさん → 副委員長は9通り
…以下10人に分けると:
9 + 9 + …(10回) = 90 通り
→ 和の法則でも求められますが、場合分けの数が多くなり非効率です。
◆積の法則が使えるとき、和の法則も使える?
結論:理論的には可能です。
積の法則が使える状況でも、「各ケースをすべて細かく分けて数える」ことで、和の法則で答えを出すこともできます。
ただしそれは現実的には非効率であり、実用的ではありません。
◆和の法則が使えない場合はある?
結論:ありません。
和の法則は「すべての可能性を分けて足し上げる」という考え方に基づいているため、
どんな問題でも場合分けすれば使うことができます。
積の法則の結果も、「最初の選択肢ごとに分けて数える」とすれば、
最終的には和の法則の構造と一致します。
◆使い分けの整理表
問題のタイプ(選び方の構造) | 和の法則 | 積の法則 |
---|---|---|
AかBのどちらか一方を選ぶ(重なりなし) | ✔️ | ✖️ |
Aを選び、続いてBを選ぶ。Bの選び方はAによらない | ✔️(可能) | ✔️ |
Aを選び、続いてBを選ぶ。Bの選び方はAによって変わる | ✔️ | ✖️ |
→ 和の法則は万能だが、細かく分ける必要がある
→ 積の法則が使えるなら、積を使う方が効率的で自然
◆和の法則・積の法則の数学的な関係
数学的に見ると、積の法則は和の法則を“圧縮した形”だと考えられます。
たとえば次の式:
(3 + 2) × 4 = 3 × 4 + 2 × 4
これは積の法則が、和の法則に展開(分配)できる例です。
つまり、すべての「かけ算の形」は、足し算の形に分解することができるのです。
和の法則は、数え方の根本的な考え方であり、積の法則はその発展・整理された表現といえます。
まとめ ▶▶▶ 和の法則・積の法則を正しく見分けよう
- 積の法則は、選び方が段階的で、かつ後の選択肢の数が変わらないときに使う。
- 和の法則は、選び方が重なりのない複数のケースに分かれているときに使う。
- 実際の問題では、まず「選び方の流れ」が段階的かどうかに注目する。
まずは「AかBか」なのか「AしてB」なのかを見極めること。
そして、積の法則が使えない場合でも、和の法則で丁寧に分けて考えれば正しく数えることができます。

📌 数学本舗の無料体験で、定義から理解する学びを体験しよう
数学本舗では、こうした定義に基づいた理解型の学びを大切にしています。
「なぜそうなるのか?」を根本から考えることで、公式やテクニックに頼らずに自力で解ける力を育てます。
現在、無料体験授業を随時受付中です。
オンラインで全国どこからでも参加可能ですので、お気軽にご相談ください!